CEAT基礎研究

H322(癌細胞)のDNA損傷とAkt-mTOR Pathway

 マイクロ波温熱療法は、DNA損傷経路の活性化とAkt-mTOR経路の抑制によってアポトーシスを誘発する。マイクロ波を照射したH322細胞における、HSP70、HSP90などの熱ショックタンパク質(HSP)にもたらされる影響について調べたところ、マイクロ波照射によってHSP70の発現は増加させるが、HSP90には、特に影響が見られなかった。温熱療法に反応してのHSP70の発現は、抗腫瘍免疫を誘発することは報告されている。またHSP90は、多くの細胞内タンパク質が適正な構造を保つために必要であり、その多くは、Raf-aとAktなどの細胞の増殖と生存に必要なキナーゼである。γ線照射や多くの化学療法薬によって起こる二本鎖DNA切断(DSB)は、ヒストンH2AXとChk2、Chk1を含む多くの分子のリン酸化反応をたどるDNA損傷経路を活性化させ、この検証機構は、細胞周期進行が回復する前に、細胞にDNA損傷を修理する時間を提供するが、もし損傷が深すぎれば、アポトーシスや細胞性老化を引き起こす。Aktのリン酸化は、アポトーシス前駆因子を不活化し、アポトーシスを引き越す下流分子をリン酸化するmTORを活性化するので、種々の癌に対して活性化されるAkt-mTOR経路は、アポトーシスに重要な役割を担う。DSBは、熱誘因性細胞死をもたらし、γ-H2AX(セリン139におけるヒストンH2AXのリン酸化反応)の病巣を形成することも近年報告されている。また1.95MHzのマイクロ波電磁場はAktの発現を制御することも報告されている。温度を変化させる形でマイクロ波を照射した細胞では、照射しない細胞と比較して、γ-H2AXとリン酸化Chk2は増加し、Akt総量とリン酸化Akt、リン酸化mTORは減少する。一方、Chk2総量とPTENはいずれの温度でも量的な変化はなかった。こうしたことは、マイクロ波温熱療法が、DNA損傷検証経路を顕著に活性化し、Akt-mTOR経路を不活化することを示唆している。(米国ベイラー医科大学

本村禎准教授の研究成果)